住宅セーフティネット法の改正法案が5月30日に衆院本会議で可決され、成立しました。
改正法は、①居住支援法人等が住宅確保要配慮者(低額所得者、高齢者、障がい者など、法2条1項各号定める者)のニーズに応じて、安否確認や見守りなどのサービスを提供する住宅(居住サポート住宅)の認定制度の創設、②国土交通大臣による家賃債務保証業者を創設して、居住サポート住宅に入居する際には認定保証業者による保証を引き受けることを原則とすること、③居住支援法人の業務に入居者からの委託に基づく残置物処理を追加すること、などが主な内容となっています。
①居住サポート住宅は、施行後の10年で10万戸を供給するとの目標を掲げています。しかし、6年前に、住宅確保要配慮者への提供を拒まない登録住宅制度が創設されましたが、登録戸数の目標は超過達成したものの、大半は特定の事業者の既存賃貸住宅が大量に登録されたことによるものであり、空室率はわずかに2.3%にとどまり(2022年12月末時点)、およそ住宅確保要配慮者のニーズに即応できるものとはなっていません。また、5万円未満の家賃の登録住宅が全国で約19%、東京都で約1%であり、低家賃住宅が少ない点も問題です。こうした実情についての分析も十分にしないまま、居住支援法人等によるサービス提供が付帯されただけで、認定戸数が増え、住宅確保要配慮者の利用が進むとは思えません。
②家賃債務保証業者の認定要件としては、居住サポート住宅における保証提供を拒否しないことや、住宅確保要配慮者からの保証委託の申し出に対し、緊急連絡先などの情報の提供を求めないことなどが定められました。今後、政省令にて、より詳細な要件が定められる見込みです。しかし、「追い出し屋」と称され、自らや賃貸事業者の利益を優先してきた家賃債務保証業者が、こうした規制を受けるような認定をするのかは不透明です。公的保証を拡充するか、そもそも登録住宅や居住サポート住宅では、保証を求めないように制度設計すべきです。
③残置物処理に関しては、この間、国土交通省がモデル契約条項を作成して普及に努めていますが、そのねらいは、「大家が賃貸住宅を提供しやすく」するところにあります。もちろん、賃借人が、自らの意思により、相続人に迷惑をかけないために、残置物処理の委託をすることは、自己決定に属することですが、残置物処理を居住支援法人等に委託することを賃貸住宅の入居の条件とすることは、果たして、居住の安定に資するといえるのでしょうか。私個人としては疑問の残るところです。
改正法は、6月5日に公布され、交付の日から1年6月を越えない範囲内において政令で定める日に施行されます。施行までには、居住サポート住宅の認定要件や、家賃債務保証業者の認定要件などについての政省令が定められる予定であり、パブリックコメントの募集もあると思われます。適宜、住まいの安定を確保する観点から、意見を述べていきたいと思います。