当事務所では、お茶やお菓子を用意して、将来に向けてちょっと知っておきたい法律に関する話題を弁護士とおしゃべりする「きづなカフェ」をゆるく企画しています。
先日10月21日に、「遺言書を書いてみよう」のテーマで開催しました。最初に全体に20分ほどのミニ講義を聞いていただき、その後、各テーブルで弁護士1人と参加者2,3人とで1時間半ほどゆっくりおしゃべりタイムをとりました。皆さん、いろんな疑問が次々でてきて、話題が途切れることなく各テーブルで賑わっていました。「気になっていたので、弁護士の経験談も交えた書き方を聞けて良かった」「他の参加者の疑問を聞いて新しく気付けたりして良かった」など、ご好評をいただきました。
ここで簡単に最初のミニ講義の内容をご紹介します。
「遺言書を作ってみよう~相続を争族にしないために~」
1 まずは、遺言書の方式と特徴です。
遺言書の種類は、大きく①公証人が立ち会って作る「公正証書遺言」と、②遺言者が自ら書いて作る「自筆証書遺言」があります。
①公正証書遺言は、銀行や登記所などでも名義変更がスムーズですし、家庭裁判所での検認が不要、無効になる心配が少ない、保管も確実というメリットがあります。しかし、証人となってくれる人2名を頼んで公証役場に来てもらわねばなりませんし(弁護士にご依頼の場合には弁護士と事務員が証人になることができます)、公証人へ支払う手数料の負担があります(手数料額は遺産額により変動)。
弁護士にご依頼いただくと、弁護士がご本人から遺言についての希望を聴き取り、内容を練って遺言の文章を作り、必要書類を収集し、公証役場に作成を依頼し、公証人からの意見も入って文案が完成したら、いよいよ遺言書を完成させる日、公証役場に出向いて、公証人からご本人に内容を充分に確認されてから、署名押印して完成させます。
②自筆証書遺言は、手軽で低コストが最大のメリットです。しかし、自筆で文章を書けないとダメ、不完全な内容でその通り実現できないことも有り得る、ご本人の意思に基づく内容か後日に争いが生じる危険、遺言書が死後に見つけてもらえなかったり、家庭裁判所の検認手続が必要だったりというようなリスクもあります。紛失や検認を避けるには、法務局での保管制度が有用です。それでも法務局では、内容の是非や実現可能性、相続税関係、遺言能力のチェックまではしてくれないので、そこは事前に弁護士に相談すればアドバイスもできます。
2 次に、遺言書を書いて欲しい事案についてです。
弁護士の経験上、遺言書を作っておけば事後の争いや遺産の有効活用ができたのに!と思ってしまう事例がいくつかあります。
(1)子がいない夫婦で、兄弟姉妹(甥姪)が法定相続人となる場合
夫婦で築いた財産なのに、遺言書が無ければ、残された高齢の配偶者が疎遠な義理の兄弟姉妹らの協力を求めなければ相続できないのです。
(2)相続人同士で話し合いが難しい関係にある場合(婚外子や前婚の子がいる、兄弟仲が悪いなど)
「争族」になると予測できますよね。遺言書があれば、協議してこじれることなく内容通りに淡々と相続手続を進められます。
(3)相続人がいない場合
独身、子がいない、親も祖父母も既に亡くなっている、一人っ子の場合、従兄弟ら親戚に遺産を渡したくても叶いません。遺言書が無いと国の財産に吸い上げられることになります。
(4)法定相続分の割合だと相続人間に不公平感が生じる場合(生前贈与や介護負担が偏っていたなど、平等な割合だと不満が出そう)
遺言書が無いと「争族」になって子同士が深い恨みや絶縁になったりする一方で、負担の大きかった子に厚く分与する遺言があれば、納得や感謝の気持ちが生まれます。
(5)相続人の中に知的障害者がいるなど権利保護が十分できるか不安のある人がいる場合
対等な協議ができずに、周りに言いくるめられて正当な相続権さえ奪われることもありますが、具体的な配分を明記した遺言書があれば、協議の必要無く守られます。
(6)本人や相続人が外国籍などの場合、外国法に基づいたり、相続人を特定する(日本の戸籍謄本に代わる)資料の収集が困難になる場合
基づく法律の調査や資料の収集だけで時間、手間、費用がかかり、スムーズに相続手続を始められないところ、遺言書があれば、その内容通りに最小限の資料で済みます。
以上、このようなミニ講義でした。ここからいろいろ質問したいことが湧き出られましたか?この続きはカフェトークで、弁護士と自由にお話できます。次回のきづなカフェ2026年3月4日(水)14時~も、同じ「遺言書を作ってみよう」のテーマで行いますので、気になった方は、是非ともお申し込みください。
以上


