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任意後見契約をいつ発効させるか

1 任意後見契約は、契約締結時に契約の効力を発効させる即効型、契約締結後に一定程度認知機能が低下した時点で発効させる将来型があります(他に、財産管理契約などと組み合わせる移行型もありますが、いつ任意後見契約を発効させるかを論ずる本稿では横に置いておきます)。

 

2 条文上、任意後見契約を発効させる時期として、「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況」になった時と規定され、その時点で候補者は家庭裁判所に監督人選任の申立をする必要があります(任意後見契約法4条1項)。
  成年後見制度を利用する場合、成年後見相当の方は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」(民法7条)、保佐相当の方は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分」(民法11条)、補助相当の方は「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分」(民法15条)と表現されています。
  この事からすると任意後見契約の発効時期については、比較的柔軟に捉えることが可能といえそうです。さて、具体的には「いつ」と考えるべきなんでしょうか。

 

3 任意後見契約を締結する場合は、ご本人と意思疎通を図りながら、必要な委任事項や、その範囲などを詰めていきます。ご本人がその先の人生で何を重視し、不安に思い、希望されているのかお伺いしながら契約内容を話しあっていくことになるでしょう。その意味では、任意後見契約の具体的な発効時期も、ご本人がどういった生活を重視し、何を不安に思っているのかを一緒に考えた上で、判断していくことになるのではないかと思います。上手く表現しにくいですが、私はご本人が「困った状態になった時」と捉えています。
  例えば、
・税金の納付書が届いてもどうしたら良いのか分からなくて周囲に何度も聞いている。
・通帳の引き落としの摘要の記載から、どういった理由で引き落とされているのか理解できない。説明しても何度も同じ質問をして不安になっている。
・比較的大きなお金なのに、自分が出金した現金がどこにどれだけあるのか把握できない。
 といったような事実が生じている場合でしょうか。
  認知機能が低下してくると、そのような状態になっていること自体も記憶に留められず、ご 本人は「困っていない」「できている」「大丈夫」と仰ることがあります。ただ、客観的事実として、そのような行動が確認できるときには、具体的に説明をした上で、契約発効の必要性をご理解頂くことになるのだと思います。そうしたときのための任意後見契約のはずですので。

 

4 ただし、そのような契約発効の時でも、発効の結果、ご本人の重視する生活の在り方が激変してしまわないようにするのはどうしたら良いか、候補者として関わる場合、この辺は非常に神経を使います。そうした状況を上手く乗り越えるためにも、候補者の弁護士や親族の他、ケアマネ、訪問看護士、ヘルパーなどご本人に関わる他業種との連系がとても大切です。
                                         以上

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