成年後見制度等を利用している者は、警備員として働けないとした旧警備業法の規定は憲法違反であるとして、元警備員の男性が国に対して100万円の損害賠償を求めた訴訟において、最高裁は、旧警備業法の規定が違憲であると判断しました。今回のトピックスでは、2026年2月に出された上記最高裁判決について、解説いたします。
2019(令和元)年改正前の旧警備業法では、「成年後見人若しくは被保佐人」は警備業を営んではならないとされていました(旧警備業法3条1項)。
岐阜県に住んでいた30代の男性は、警備会社で働き、工事現場等で警備業務を行っておりましたが、軽度の知的障害があり、2017年に保佐人が付され、「被保佐人」となりました。
すると、上記改正前の旧警備業法の規定により、男性が警備業を行うことは法律上認められないとの理由で、会社から雇用を終了すると通知されてしまいました。
そこで、男性は、2018年1月に訴訟を提起しました。
訴訟において、男性側は、旧警備業法の規定は、保佐人が付けられた者の職業選択の自由を侵害し、法の下の平等に反するとして、違憲であると主張しました。また、国に対して、このような違憲な規定を改正せず放置し続けた責任があるとして、国家賠償請求も行いました。
最高裁は、旧警備業法の規定は、下記の理由から違憲であると判断しました。
最高裁は、2014年に批准された障害者権利条約、その後の2014年に施行された障害者差別解消法等により、旧警備業法規定を取り巻く諸事情は変化しており、社会における障害の捉え方の変化等を受け、社会や国民の意識の変化が進み、障害者の権利の保障のあり方が大きく変容したことを指摘しました。そのうえで、遅くとも、本件の元警備員の男性が退職した2017年3月時点までには、被保佐人のうち警備業務を適正に実施するに当たって必要な能力を備えた者が本件規定により一律に警備業務から排除されることによる不利益は、もはや看過しがたいものとなっているとして、職業選択の自由および法の下の平等を認める憲法に違反しているとして、旧警備業法の規定を違憲としました。
一方で、最高裁は、障害者に対する社会や国民の意識の変化等は、外形的事実として観察することができるものではないこと、障害者差別解消法等の施行が2016年であり、本件男性の退職時点と相当に近接していた時期であったことなどを理由に、国会が正当な理由なく長期にわたって旧警備業法の規定を放置していたとはいえないとして、国家賠償責任は否定しました。
最高裁が、法律の規定そのものを違憲と判断したのは、本件が史上14例目です。成年後見制度をめぐっては、今後、社会や国民意識の変化を受けて、法律の規定も時代にあわせて変化していくことが求められています。


